大悟少年の事件簿 ジュンベシ村タオル紛失事件(旅行記26話)

 

トレッキングを始めて、毎日雨が降っている。

1日中降っているわけではなく、午前中は晴れているのだが昼過ぎには雲行きが怪しくなり始め、夕方にはザーッと降り始めるのだ。

夕方までには宿に辿り着いているので雨に打たれることはないのだが、毎日雨だと気が滅入る。

 

「サンタさん、毎日雨降ってますけど、もう雨季ですか?」
(・ε・)

 

「雨季じゃなくても雨は降ると思うよ」

 

うんまぁ、そりゃそうだが。それでも毎日降るのはさすがにやめてほしいな。

 

 

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ラムジュラ・バンジャン峠の手前で撮影

 

 

 

正午を回った頃、ラムジュラ・バンジャン峠の近くにあるロッジに到着。
標高3500mなので、曇っているとかなり冷え込む。

そこで昼食と摂った後、外に出て遠くの空を見ると雨雲がかなり厚くなっていた。

 

「今日はもう歩かない方がいいかもしれない」

サンタさんが言う。
急に土砂降りになる可能性があるかもしれないとのことだ。

この日は、ここに宿を取ることにした。

 

 

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霧の中、荷物を運ぶシェルパ

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霧の中を歩く男の子

 

 

 

夕方になると、周りに霧が立ち込め、一気に気温が下がり始めた。

 

かなり冷え込んできたな……。これは凄い雨が降りそうだ。

 

そう思った途端に、大粒の冷たい雨が激しい音を立てながら地面を打ち付けてきた。

 

うひゃー、やばいやばい。

 

急いでロッジに避難する。


夜は石窯の近くで暖を取った。

寝室に行ってもいいのだが、そこはベッドが置いてあるだけの簡素な造りの部屋なので、やたら寒いのだ。
ロッジの住人が寝静まる時間まで、火に当たって体を暖めておきたい。

同じロッジに泊まっているフランス人のカップルと火の明かりを頼りに、トランプをしながら時間を潰す。

 

「こっちに向かっている途中に急に霧が出てきたから、びっくりしたよ。近くにロッジがあって助かった」

カップルの男性は笑いながら言っていた。

 

 

 

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なんか幽霊的なものが出てきそうである

 

 

 

 

翌朝、凍てつく寒さに目が冷めた。

 

「ぷぎゃー。寒いー」
ブルブルブル(((*´д`*)))

 

石窯のある台所に向かおうと外に出ると、一面銀世界だった。

夜中の間に雨は雪に変わり、一気に降り積もったようだ。
今も純白の雪がぱらぱらと降り続けている。

 

「グッドモーニング」

 

台所に向かうと、石窯の前に腰掛けているフランス人のカップルが声を掛けてきた。

サンタさんも石窯の前で丸くなっている。

どうやら俺が1番遅起きのようだ。

 

「でもグッドなモーニングじゃないよな、コールドなモーニングだ」と冗談をカップルの男性は言う。


フランス人カップルは、朝食後にロッジを出発した。

 

まだ雪が降り続いているが大丈夫だろうか。

 

「今日は歩くの危ないかもしれないね」

サンタさんが言う。

 

「やっぱり危ないですか?」
(・ε・)

 

「雪で滑って、谷底へ落ちてしまうかもしれないよ」

 

「そりゃ嫌ですね」

 

しばらく天気の様子を伺うことにした。

雪がまた激しく降るようなら、ここにもう1泊することになる。

 

 

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雪の山道を歩いていく。写っている人はサンタさん。

 

 

 

 

数時間後。

雪は止み、空を覆っていたぶ厚い雲も薄くなってきたので出発することになった。


雪の山道は歩いていて楽しい。

小さな雪玉を作って転がしながら、ラムジュラ・バンジャン峠に到着。

茶店で休憩をし、峠を下っていく。

 


下りの雪道は、かなり滑りやすい。
しかも、自分の履いている靴はトレッキングシューズではなく、高校生の頃から使っているただのスニーカーである。

 

ランタントレッキングでは、この靴でも問題無かったので今回のトレッキングでも大丈夫かと思っていたが、雨や雪が降った道はかなり歩きづらい。

そのうえ、防水ではないので溶けた雪が靴の中に染み込んでしまい、足が冷たい。

 


雪山を舐めていたぜェ………。
足がキンキン痛いよー(泣)

 


「サンタさん、この靴じゃめっちゃ滑ります」

 

「その靴じゃ標高が高いところは危ないよ」

 

ナムチェに着いたら、そこでトレッキングシューズを買えとサンタさんに忠告される。

 

500m程標高が下がると積もっている雪の量も減り、雪解け水を含んだ地面はぬかるみ、更に滑りやすくなっていた。

慎重に歩いていっても何度も滑ってしまう。

 

もうお尻がビチャビチャである。
(´;ω;`)ウッ・・

 

うぅ……、お尻が冷たい。もう歩きたくねー。

 

そう思いながら、急斜面の道に差し掛かった時、ズルッと豪快に足を滑らせた。

 


「どわぁっ!?」
Σ(゚д゚lll)

 


ドロドロにぬかるんだ山道に、体が持っていかれる。

 

 

ギャァァァァァアアアアアアアッ!!
(((((( ;゚Д゚)))))

 

止まろうと思っても止まらないっ!どうにもならんっ!制御不能っ!
もうどうにも止まらない!

 

誰か助けてェェェェェェェェェェェェッ!!
(((((( ;゚Д゚)))))

 


地面から生えるように埋まっている大きな石に体をごつごつと打ちつけられながら、15m程下に流され、ようやく停止した。


「大丈夫ですか!?」

サンタさんが急いで歩み寄ってくる。

 

「………大丈夫じゃないです」
(号泣)

 

怪我はしていないが、全身泥まみれで、ずぶ濡れである。

 

うぅ……、冷たいー、死ぬー。
(号泣)

 

ぶるぶる震えながらジュンベシに到着。

 

 

 

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ジュンベシの村

 

 

 

ジュンベシを出発する朝、洗濯物を干してあるロッジの中庭に向かった。

 

あれ、タオルが無いぞ?
(・ω・`)

 

他の衣類は干してあるのにタオルだけ見当たらない。

 

風で飛ばされたか……。いや洗濯バサミでしっかりとめてあるのでそれはない。現に他の洗濯物はあるし。

 

宿の人間が間違えて取り込んだのかと思い、宿の洗濯物を漁ってみるが、やはり見つからない。

そのことをサンタさんに言うと、「他のトレッカーが持っていったんだと思う」と答えた。
稀に他のトレッカーの物を盗む悪い人もいるそうだ。

 


チクショォォォォォッ、誰だァァァァァァァッ!
俺のタオル盗んだトレッカーはァァァァァアアアッ!
(# ゚Д゚)ゴルァァァァァ!!

 


俺は絶対にタオルを盗んだ犯人を暴き出してみせる。
じっちゃんの名にかけて。

 


なので、なんとか犯人を見つけ出して吊るし上げようかと思ったが、犯人を掴める手がかりは全く見つからない。

うんうん悩んでいるとサンタさんがこう言った。

「もうとっくに出発してるよ。タオル盗んだ人は」

 


……………!Σ(; ・`д・´)

そうかっ!そうだったのか!

確かにそうだよね。


謎は全て解けた!(泣)


実際タオル無いと困るから盗むのはマジでやめてくれ。(T^T)
予備のタオル持ってきといてよかったわ。

 

 

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