ネパールに来て、もうすぐ3ヶ月。ゆったりとネパールの時間に身を任せていたら、いつの間にか、こんなにも月日が流れていた。
はー。なんもする気が起きん。
先日、ようやく6ヶ月のインドビザを取得したが、移動する気が全く起きん。
というか、インド行きたくねー。マジで行きたくねー。 このままネパールに沈没してー。
それか日本に帰国したい。
そもそもインド行きたくないのに、なんで俺インドビザを取得したんだ……。
明後日には移動するか……。
でもインドかぁ………。
行きたくね〜………(泣)
そんなことを考えながらフロントの椅子に腰掛けてくつろいでいると、ディペンが話しかけてきた。
「大悟サン」
「んぁー、なんじゃい?」
「いつインド行クマスカ?」
「んーとねー、多分明後日ここを出発する」
「行カナイデ、ズットココニいるイイヨ」
「んー、そうしたいのは山々なんだけど、ネパールのビザがそろそろ切れるんだよ」
「ネパールビザ取って働クイイヨ」
「就労ビザの取得方法が分からん」
とゆーか、俺は外国に行ってまで働きたくない。 ワーキングホリデーとかバイタリティー溢れる人の気持ちがマジで理解できん。 私ビール飲ミタイネ。とディペンが口にする。
「ははーん、ディペン。パーティーという口実で俺にビールを買ってもらおうということだな」
「オ願イシマス」 笑いながらディペンが言う。
「やれやれ、しょうがないな。この大悟さんが直々に買ってきてやろう」
まぁネパールではビールは高いもんな。 ここの宿の従業員の給料では、とても高い買い物になる。 フロントでささやかなパーティーだ。
「大悟さん。ネパールに戻ってきてね。そして私の村に一緒に行きましょう」 そこで一緒に食事をしようと、ラジが言う。
そして、翌日。 荷物をまとめ、部屋を出た。
「じゃあね。世話になったね、元気で」 ディペンとラジに挨拶をして宿を出た。
バックパックを背負って、バスターミナルへ向かう。
6月中旬になると、カトマンズも日中は暑い。 銀行の壁に設置されている電子温度計を見ると、気温は34℃だった。
じんわり背中に汗をかきながら、バスターミナルに到着。 マヘンドラナガル行きのバスに乗り、車窓からカトマンズの街を眺める。
この排気ガス臭い街とも、遂にお別れだな。
空気は汚いしゴミも多いけど、何故か好きになった街だった。 この街で出会った方々が、いい人ばかりだったからだと思う。 バスはマヘンドラナガルに向けてカトマンズを出発した。
「おいジャパニーズボーイ、起きろ。食事休憩だぞ」
「んが。ふぁい………」
運転手に起こされて目が覚めた。 いつの間にか眠っていたようだ。 窓から外を確認すると、辺りはもう真っ暗だ。 腕時計を見ると、夜の9時を回ろうとしている。 夜も営業している国道沿いにある大きな食堂の前に、バスは停車している。
外に出ようと、あくびをしながらバスの乗車口を開ける。 すると、途端に強烈な熱気がムワンッと俺の身体を包み込んだ。
暑ッ!(((((( ;゚Д゚)))))
なんじゃッこの暑さはッ!?
あまりの蒸し暑さに一気に目が覚める。
バス車内は冷房が効いているので気づかなかったが、もうタライ平野に下っていたのか。 タライ平野は平地なので、標高が約1400mのカトマンズと比べて10℃ほど気温が高く、そのうえ湿気もある。
うーむ……。 日中はどうなるのだろうか………。
とんでもない暑さな気がするわ………。
そして、朝。 バスはネパール最西端の辺境の町、マヘンドラナガルに到着した。 車内から外を眺めてみると、一本道の周囲の所々に家が建っている。
はぁ……、絶対外はとんでもなく暑いだろうな……。
そう思いながら、クーラーの効いたバスのドアを開け外に出る。 刹那、予想を遥かに上回る凄まじい熱気が全身に纏わりついた。 あまりにも激しいバス車内と外の気温差に、俺は一瞬気を失いかけた。
…………………………………。
暑ぃ
暑ぃ……!暑ぃ……!
暑ッッッチィィィヤァァァアアッ!!
物凄い蒸し暑ィ!!それに日差しがヤベェッ!!なんだこの異常な暑さわッ!?
まるで圧力鍋の中に放り込まれたようなムワンッとした熱気。 その凄まじい熱気を帯びてギラギラと輝く猛烈な日差し。 道端にフライパンを置いておけば、いとも簡単に目玉焼きが作れるだろう。
6月中旬のタライ平野の暑さがここまで過酷だとは…………!! (;´д`lll)ゞ
今まで「暑いよー(;´д`)」って言ってた場所とは暑さの桁が違う。 松岡修造1万人分の熱気と言っても過言ではない。
日本の蒸し暑さなんか天国に思えてくるぜェ……。
とにかく、この暑さから一刻も早く避難せねばッ!!
直射日光に当たる場所にいれば、マジで脱水症状を引き起こしかねんッ!
バスが停車した位置から、一番近くにある宿に向かった。
暑ィ……。(~д~|||)
100mぐらいしか歩いてないのに、ヘロヘロだ……。
宿に入り、カウンターにいる男に尋ねる。
「す……、すいません……。今晩泊まれますか?」
「あぁ、泊まれるぞ」
聞くと、空いている1番安い部屋が、1泊400ルピーのトイレ・シャワー付きの部屋のみだった。 少し割高な気がしたが1泊のみの予定なので、まぁいいだろう。 それにこの暑さの中、バックパックを背負って歩いて宿探しなんぞ出来ん。
宿の中にいても暑いことには変わりないが、猛烈な陽射しが照りつける外にいるよりは大分マシだ。 汗だくになった服を脱ぎ、シャワーを浴びようと蛇口を捻る。
やっぱ暑いところでは水を浴びるのが一番涼をとる方法だよな。
さぁドバーっと体に水を浴び………熱ィィィィィィッ!?
熱湯シャワーだった。
水道管が熱を帯びているため、出てくるのも熱湯である。
なんて場所なんだ、ここは………。
熱湯が冷めるのを待ち、シャワーを浴びた。
泊まっている部屋は日当たりが良い。 だが、この暑さではそれが逆に仇となる。
暑いー…………。
1階の食堂は完全に日陰になっていたし、そこに降りるか……。
宿の1階へ降り、椅子に腰掛ける。
「それにしても随分疲れた顔をしてるな。兄ちゃん」
宿のカウンターにいる男が話しかけてきた。
「いやー、あまりの暑さにびっくりしちゃって」
「そうかそうか。今日は特に暑いからな。ほら、水飲みな」
男はそう言って、大きな冷蔵庫からキンキンに冷えた水が入ってるペットボトルを差し出す。 冷蔵庫の中には水道水の入った大量のペットボトルが積まれていた。
「喉乾いたら勝手に冷蔵庫開けて好きに飲みな」 と男は言う。
フリードリンク制である。
男の好意に甘え、冷たい水を頂く。
旨ェ〜ッ!キンキンに冷えた水旨ェ~ッ!
昼食後、俺は宿の食堂の椅子に腰掛けながら、外を眺めていた。 このような炎天下の中、外に出て観光するということは自殺行為だ。 洗濯物を干しに、たったの1分間、宿の屋上へ行っただけでもグロッキー状態である。 時折、汗をびっしょりかいた男達が食堂にやってきて、冷蔵庫を開けてペットボトルを取り水分補給をしていく。
相当暑そうだなぁー。(・・;) 現地の人もあんな感じじゃ外は絶対歩き回れないなこりゃ。
そして夜になった。 雨季のタライ平野の一部地域ではマラリア感染の恐れがあると言われているので、蚊取り線香を焚いて床につく。 まぁ天井にも巨大なファンが設置されてあるし、寝ている時に蚊に刺されることはないだろう。 明日はいよいよインド入国。しっかり睡眠をとって体調を万全にせねば。
…………………………………。
暑ぃ
蒸し暑くて全く眠れん。
こんなに暑くちゃ眠れねぇよー。 どうすればいいんだ………。
…………はっ!そうだっ!
あることを思い立った俺は、タオルを手に取りシャワー室に行き、着ていた衣類とタオルをビチャビチャに濡らした。 そして濡れタオルは顔に巻き、ビチャビチャの服を着たまま寝るという行為にでた。
天井のファンが生み出す風がひんやりして心地いい。 我ながら名案である。
ハァ〜。涼しい〜。気持ちいい〜。
そのまま自分は眠りについた。
だが1時間後、目が覚めた。
暑ぃ
暑さに目を覚ますと、着ていた服がもうパリパリに乾ききっていた。
……ありえないだろ。
なんて暑さだ。
またシャワー室に行き、着ていた衣類とタオルをビチャビチャに濡らす。 何回かこの行為を繰り返しながら、夜が更けていった。
熟睡できねー(号泣)
朝になった。 いよいよインド入国の日である。
……行きたくねー(泣)
「兄ちゃんインドに行くのか?」 宿の主人が尋ねてきた。
「えぇ、そうです」(行きたくないけど)
「じゃあ今ちょうど宿の前にインドのバンバサ行きの馬車が停まっているから、それに乗るといい」
「そうなんですか。ありがとうございます」
宿の前に停車している馬車に乗る。 馬車はバスよりも移動速度は劣るが、運賃は安い。 それに暑い車内にいるより、風を感じながらのんびり移動する方がいい。 馬車に揺られること十数分後、ネパール国境のイミグレーションに到着した。
イミグレというより、パッと見、ただの一軒家に近いな……。 洗濯物干されてるし。 でも一応、英語でイミグレーションと書かれているからイミグレーションに間違いはないだろう。
「ほら、ここで待ってるから手続きを済ませてきな」 馬車の運転手が言う。
「はーい」
俺一人のために他の乗客を待たせるのは申し訳ないなと思いつつ、イミグレに足を運んだ。
建物の中の椅子に腰掛けてせっせと編み物をこしらえている中年の女性がいた。
このおばちゃんが係官かな?
そう思っていると女性が言ってきた。
「インドに行くのかい?」
「あ、はい。そうです」
「じゃあそこに座って」
そこにあった椅子に適当に腰掛ける。
「おーい!あんたー!ツーリストだよー!」
おばちゃんがそう言うと、奥の部屋から半袖シャツに短パン姿のおじさんが現れた。
「インドに行くのかい?」
「はい、そうです」
随分ラフな格好をした係官である。 まぁこんな暑いところではスーツなど着てられないか。
「パスポート見せて。それとこれ出国カードね。これに記入して」
係官のおじさんにパスポートを渡す。
「おや、日本人か。今の時期に珍しい」 パスポートを見ながらおじさんが言う。
「日本人はこの国境に来ないんですか?」
「今の暑い時期は滅多に来ないねぇ。乾季になるとたまにやって来るが」
記入した出国カードを渡すと、すぐにパスポートにスタンプが押されて手続きが完了した。
緩ッ!Σ(・д・) 記入した内容全く確認しなかったぞ!このおじさん!
こんな緩い国境は、タイのチェンコンからラオスに行った時以来だな。
馬車へ戻り、またゆっくりと馬車は動き出す。 遠くに見える民家の側では子供たちがはしゃぎまわり、大人たちは木陰に腰を下ろして談笑している。 ネパールならではの、のどかな光景が目に映る。 後ろを振り返ると、ずっと一本道が続いており遥か彼方に地平線が見えた。
あっという間だったなー。ネパールでの3ヶ月間。
馬車はゆっくりとインドへ向かって走っている。 俺は馬車に揺られながら、やってきた道をただずっと眺めていた。
(インド編に続く)
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