鶏の鳴き声で6時前に目が覚めた。 荷物をまとめて宿のチェックアウトを済ませた。
今日はラオスに向かう日である。
パスポートを持ってイミグレーションに並んでいると、ハンチング帽子を被っている男性と日焼け対策ばっちりな感じな長袖の服を着ている女性、それに小さな女の子が日本語で会話しているのを耳にした。
あ、日本人だ。(・ε・)
向こうの人達もこちらに気付いたようで声をかけてきた。
「ラオスの何処に行かれるんですか?」
バスでルアンナムターへ向かう予定だと答えると、隣にいたハンチング帽子を被った男性が口を開いた。
「あぁ、そうなんですか。僕はスローボートでルアンパバーンに行くんだよ」
ルアンバパーンは町全体が世界遺産に登録されたラオスの古都である。
「日本人1人の船旅は少し心細いなー。国境を越えて向こう側のフェイサイでルアンパバーンに向かう日本人と合流出来ればいいんだけど……、いないだろうな」
男性が残念そうに言う。
「あの、じゃあ一緒にルアンパバーンに行きますか」
「え、いいの?ルアンナムターに行くんじゃ?」
「ルアンパバーンにも行きたいなと思っていましたし構いませんよ」
ということで、ラオス入国後の行き先はルアンパバーンに決定した。 男性は、自分がかなり軽く旅行ルートを変えたことに驚いていたが、時間はたっぷりあるので全く問題無い。
男性の名前は浅利さん。タイ語をかなり話せる人で、ラオスに行くのは10年ぶりとのことだ。
タイ語を話せる人と一緒に行動するのは非常に心強い。
タイを出国して川岸に停めてあるボートに乗り込む。 ラオスのボーダーで出入国カードに必要事項を記入し、それとパスポートを受付に渡す。
というか、カードの記入内容全然見てなかったな。
ボーダーのすぐ近くにあるチケット売場でルアンパバーン行きのスローボートのチケットを購入し、乗り合いトラックで船着き場へ向かう。 ボートに乗り込み待つこと数十分、大勢の旅行者を乗せたボートはエンジンを吹かしメコン川をゆっくりと下っていった。
スローボートは一日ではルアンパバーンには着かないので、フェイサイ〜ルアンパバーンを結ぶボートの中継地点のパクベンという町で一泊することになる。 一泊二日の船旅だ。
自分と浅利さん以外の旅行者は全員西洋人旅行者で皆テンションが高い。
ボートでは浅利さんと話をしたり、岸沿いにあるラオスの村を眺めたりしていた。
「ラオスって数十年前まで鎖国状態みたいなものだったんだよね」
浅利さんが言う。
10年前にラオスを訪れたときにルアンバパーンに行きたかったらしいが、当時は山賊がバスや車を襲撃する事件が頻発していたらしく、やむなく断念したらしい。
途中、水しぶきをあげながら猛スピードで駆け抜けていくスピードボートを目にした。
うおぉ、凄いスピード。Σ( ・д・´)
スピードボートは6、7人乗りのモーターボートだ。屋根は無いし猛スピードで飛ばすので傘もさせない。レインコートがないと全身びしょ濡れになってしまう。目的地に着く頃には地元の人も放心状態だ。
たまに死亡事故も起きている。
出川哲朗が乗ったとしても最初のうちはなんとかリアクションをとり続けるだろうが、最終的にはマジヤバい状態になってしまうだろう。
時間が経つにつれ、フェイサイを出発する頃にはテンションがMAXだった西洋人たちも静かになっていた。
日が暮れる前にパクベンにボートは到着した。
パクベンは村に毛が生えた程度の規模の町だ。数年前まで電気が通ってない建物もあったという。 宿は上り坂の途中にあるゲストハウスに決定。 オーナーに浅利さんがタイ語で交渉したこともあり、少し割引してもらった。 夜は浅利さんと一緒に食事をした。 浅利さんにラオスの黒ビール『黒ビアラオ』を教えてもらって飲んでみた。
朝、目覚めると大雨が降っていた。 船着場近くの商店で昼食用のサンドイッチを買い、ボートに乗り込む。
約7時間半かけて、ボートはルアンパバーンに到着した。
悲しきかな、旅行者同士にも経済力の格差というものがある。 そんなわけで別々の宿に泊まることになるため、浅利さんとはここでお別れだった。
「まぁ、また会うと思うけどね、同じ町にいるんだし」
浅利さんはそう言ってトゥクトゥクに乗っていった。
さて、宿を探さねば。
バックパックを背負って船着場からテクテク歩き出す。
ゲストハウスを何軒か訪ねてみたが、観光地だけあって、ルアンパバーンのゲストハウスは今まで泊まってきた宿に比べて割高である。 6軒目に訪ねた宿のトリプルの部屋が空いており、他の旅行者と相部屋という条件ならドミトリーと同じ料金で構わないということで、その宿に落ち着いた。
翌日、ルアンパバーンの町を散策してみた。 非常に穏やかな空気が流れており、のんびりとした町だ。 近年は観光開発が急速に進み、何も無かった町もだんだん変わりつつあるらしいが、旅行者にとっては居心地のいい場所である。 ルアンパバーンでは、僧侶が托鉢のために早朝に町を練り歩く様子が有名だ。 俺は早起きが苦手なので結局見なかったけど。
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