アルコールフィーバー(旅行記7話)

 

ムアンシンでは自転車を借りて遠くまでサイクリングをするのが毎日の日課になりつつあった。
自転車よりバイクの方が楽だし移動速度も距離も断然上回るのだが、そんなに金を持っていない自分はレンタル料金の断然安い自転車になるわけである。

 

しかし、毎日激しいデコボコ道を通っているせいか股間が痛いな。
(´д`lll)

 

自転車に乗って適当に道を進んでいくと、遠くの方から何やら賑やかな音が聞こえてきた。

なんだろうと思い自転車を走らせて行くと、森の中で宴会のようなことが行われていた。

 

 

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お面はやはり祭りの定番である

 

 

 

自転車を停めて、その様子を眺めていると英語を話せる現地のおじさんが声をかけてきた。

 

「おぉ、外国人さん何処から来たの?」

 

「日本からです」

 

「そうなんだ、今日はタイルー族の祭りの日なんだよ」

 

おじさんは一緒に食事をしようと現地の方々が囲んでいるテーブルの方へ自分を案内してくれた。

 

「え、いいんですか?おれタイルー族じゃないんですけど」
(・д・)

 

それ以前にラオス人でもない。

 

「いいっていいって。たくさん人がいたほうが楽しいじゃないか」

 

和やかに笑いながらおじさんが言う。

 

テーブルには料理が盛られた皿が並べられ、皆で和気あいあいと話しを交わしていた。

 

 


3本投げて風船を3つ割れば景品ゲット

 

 

 

席についてすぐに、ビアラオとラオラオ(ラオス酒)が運ばれてくる。

1つのグラスに酒が注がれ、1人がそれを一気に飲み干すと、次の席の人にグラスを回す。

どうやらラオスでは、これが祭りやめでたい席での飲み方のようだ。

 

まさに間接キスの嵐である。
もし口唇ヘルペス患者がいたら集団感染は免れないであろう。

 

いやまぁ、回し飲みをするのは日本の茶道も同じか。

 

 

自分にもグラスが回ってきて、ラオラオが注がれたので一気に飲み干す。

 

プハァッ!……め、めちゃくちゃアルコール度数高ェ、この酒…!
Σ(・д・)

初めてラオラオ飲んだけどこんなに強い酒とは思わなかったな。

 

ちなみに、ラオラオのアルコール度数はおよそ40度である。
しかし美味いし飲みやすい。

 

この回し飲みは延々と続けられる。ビアラオの時は問題無いが、ラオラオの時は少々きつい。

 

「料理もどんどん食いな!」

 

周りの人が勧めてきてくれる。

 

「アッハッハッハ~!面白いねぇ~!」
ヽ(゜∀゜)メ

 

英語を話せるおじさんは完璧に出来上がっていた。
もう飲むの止めたほうがいいんじゃね?

 

 

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出来上がる前のおじさん

 

 

 

「アッハッハッハ~!僕は日本語コニチワー!アリガトー!アナタノナマエハ?だけ話せるよ!アッハッハッハ~!」
ヽ(●´∀`●)ノ

 

おじさん壊れ出した。

 

 

飲み食いし続けて、数時間が経過。

日が沈み始めた。

 

い、いかん。そろそろ町に戻らねば。
Σ(´д`)

周りの方々に、そろそろ帰りますと挨拶をする。

 

 

あー、ヤベー。ふらふらする。

自転車に乗って、ふらふら運転でデコボコ道を戻っていった。

もう頭グワングワンである。

 

 

 

 

翌日。午前10時に目が覚めた。

 

ちょっと遅めの起床である。
あー、昨日は飲み過ぎたな。ちょっと頭痛い。(-ω-“)

恐るべきラオス式飲み方で飲むラオラオ。

 

 

部屋を出ると、自分がこの宿に来て以来、初めての旅行者が泊まりに来ていた。

「ハロー」と声をかけられる。

西洋人のお姉さんだった。

水シャワーしか出ない宿に、若い西洋人の女性が泊まるなんて珍しいなぁ。
朝晩は冷え込む時期なのに。

 

宿の前のタイルーレストランで、お湯を貰ってインスタントコーヒーを飲んでいると、その女性がやってきた。

 

「前の席いいかしら?」

 

「あ、はいどうぞ」
(`・ω・´)キリッ

 

彼女は物凄い流暢な早口英語で話し掛けてきた。

 

……いかん、早すぎてさっぱし聞き取れん。
( ´д`)?

 

自分の頭の周りにクエスチョンマークが浮かんでいるのが見えたのだろう。
彼女はゆっくりと喋ってくれた。

 

「ごめん、早く喋り過ぎたわね。私の名前はアナ、フランス人よ、初めまして。あなた日本人ね。私、日本に凄く興味があるの。友達も2人日本に住んでいるのよ」

 

アナは色々話してくれたが、自分の英語力では半分程度しか理解出来ない。
彼女はこれからラオスを3週間程旅した後、ベトナム、中国と旅するようだ。

 

「中国をじっくり旅した後に日本にも行くのよ。それからニュージーランド、アメリカ、それでフランスに帰る前にイギリスに寄って終わりって感じね」

 

おぉ、いいなー、俺もヨーロッパとか行こうかなー。
2ヶ月も経たない内に金尽きるだろうけど。

 

「大悟はこれから何処に行く予定なの?」

 

「えーと、とりあえずラオス南部を回った後にカンボジア、それからネパールとインドの予定です」

 

「期間は?」

 

「カンボジアに1ヶ月、ネパールに3ヶ月、インドに6ヶ月の予定です」

 

「ネパール3ヶ月、インド6ヶ月も旅するの!?」

 

「いやまぁ大まかに決めてるだけなんで結局どうなるかは分からないですけど」

 

「ネパール、インドの何処に行くかは決めているの?」

 

「全く決めていないです」

 

「その国に入国した後決めるの?」

 

「そうですね」

 

「面白い旅になりそうね、あ、それカメラ?写真撮るの?見せて見せて!」

 

持っていたカメラを渡す。

 

被写体の6割が子供な為ロリコンに思われないか心配だ。

 

 

「ワォ、みんないい顔してるわね。大悟って子供が好きなの?」

 

「いや俺はロリコンではありません」

 

「アハハハ、別にロリコンとは思ってないわよ。いい写真撮るわねー、あ、大悟って仕事は何してるの?」

 

「……現在はただの無職です」

 

「無職!?本当!?」

 

「真実です」

 

「なんで無職なの?」

 

「日本のほとんどの会社員は長い休みが取れないんですよ」

 

「えー!なんでなんで!?」

 

いや、なんでって言われてもなぁ。2、3ヶ月、長ければ半年間も有休を取れてしまうヨーロッパの人には信じられないんだろう。

 

「んー、日本はそういう仕組みなんです」

 

本当は、日本では有休を使わずきっちり働き、最初に就いた仕事を定年まで全うすることが美徳とされている。
と言いたかったが、自分の英語力では説明出来ん。

 

「じゃあ、日本の会社員の最も長い休暇って何日ぐらいなの?」

 

「1週間ぐらいかなー」

 

「ハーッ!信じられないわ!」
(((`0Д0´)))!!

 

いや、そんなオーバーリアクションされても困るわ。

その後も色々話をしたが、質問を返すことが精一杯だった。
もっと英語の勉強しとけばよかったな。

 

 

 

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やたら凛々しい鶏

 

 

 

 

深夜、激しい雨が地面を打ちつける音で目が覚めた。

窓から外を見てみると豪雨だった。

 

乾季なのによく降るなぁ…。ま、朝には止むだろ。
(・д・)

 

そして、朝7時に起床。
雨はまだザーザーと降っている。

部屋を出るとアナが呆然と空を眺めていた。

 

「おはよーアナ」

 

「おはよー大悟、ハァ、最悪だわ。今日は自転車を借りて色んな所に行ってみる予定だったのに。大悟がいた1週間は雨は降らなかったの?」

 

「曇りの日はあったけど雨は1度も降ってないね」

 

「本当?ハァー、ツイてないわね」

 

自分も今日ルアンナムターに戻る予定だったが、どうするべきか。
雨の日の移動は面倒だ。
昼過ぎまで待って雨が止まなかったら、もう1泊しよう。

 

折り畳み傘をバックパックから取り出して雨の町をのんびり散歩してみる。
しばらくすると雨が小降りになってきたので、ルアンナムターに戻ることにした。

 

宿に戻り荷物をまとめてチェックアウトを済ます。

 

アナもレンタサイクルをして町を回ってみるそうだ。

 

「いい天気とは言い難いけど雨よりはマシね、じゃあね大悟」

 

「またね、英語ちゃんと勉強しておくよ」

 

「勉強しなくても充分分かりやすかったわよ、あなたの英語。じゃあね~」

 

そう言ってアナは自転車を走らせていった。

 

 

さて、自分もバス停に向かうか。

バス停から、ぎゅうぎゅう詰めの乗用車でルアンナムターへ向かった。

さらば。ムアンシン。サヨーナラー(_´Д`)ノ

 

 

 

ムアンシンで出会った男の子

 

 

 

 

ルアンナムターに到着後、ゲストハウスにチェックインし、テクテクとルアンナムターの町を歩いてみる。

すると「日本人か?」と、いきなり日本語で声をかけられた。

声をする方を向くと、商店の軒先で椅子に腰掛けてビアラオを飲んでいる日本人の老夫がいた。

 

「はい、そうですけど」
( ´・д・)

 

「まぁ座れ」

 

「とりあえず飲め」と老夫はコップにビアラオを注ぐ。

 

こちらが何も聞いてもないのに関わらず、老夫はタイ人の学校の先生の家に居候させてもらってるやら、今までこんな国をこんなふうに旅してきたやら、色々と話し始めた。

 

い、いかん。この爺さん、外国でたまに見かける延々と自分の人生自慢を語る典型的なタイプの日本人だ。話が長いんだよな。
(`‐ω‐´)

 

本当に長々と6時間近く話していたが、酒を飲みながら適当に聞いていたので内容は全く覚えていない。

 

爺さんに捕まってしまったせいで、全然町を回れなかったな。
しかも「明日の11時にまた会って飲もう!」と一方的に約束していきやがった。

 

 

 

そして翌日の朝。

全く気が乗らないが、昨日の爺さんの所に行かないといけない。

行ってみて適当に
「他に行きたい所があるんで、昼間から酒は飲めないです。それじゃ!」
みたいなこと言って逃げるか。

 

 

11時前に約束した場所に行ってみる。
まだ爺さんは来ていない。

少し待っているか。

 

 

11時を回ったが、まだ爺さんは現れない。

 

うーむ、自分から約束しておいてその時間に来ないとはどういうことだあのジジイ……。
(*`∧´) ムッキー

 

待ち合わせに遅刻して

「ごめ〜ん。遅れちゃったぁ。テヘッ」

と言って許されるのは石原さとみぐらい可愛い子ぐらいだぞ。

 

もし爺さんがこの後遅れてやって来て

「ごめ〜ん。遅れちゃったぁ。テヘッ」

と言った場合、俺は躊躇なくラリアットをかます。

 

 

更に20分経過。
待てども姿は見えず。

 

もういいや。遅い朝飯食べに行こう。

 

全く……、60歳を超えたいい歳の人間がドタキャンはやめてほしいわ。

 

 

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ルアンナムター郊外のとある橋近辺

 

 

 

 

翌日。
苦手な早起きをして、乗り合いトラックにてフェイサイ行きのバスが出ているバスステーションに向かった。

本当はまだラオスに滞在したいのだが、ビザ無しでの入国日数は15日までなので、一旦他の国に入らなければオーバーステイ料金を取られてしまうのだ。

切符を購入して、フェイサイ行きのバスに乗り、約5時間後フェイサイに到着。
ボーダーでちゃっちゃと出国審査を済ませ、ボートでメコン川を渡りタイに入国。

 

 

 

 

 

戻ってきました、チェンコン。
(o・∀・o)

浅利さんが泊まっていたゲストハウス、パパイヤウィレッジにチェックインした。

 

 

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