ばいばい、東南アジア(旅行記17話)

 
カンボジアとお別れの日である。
 
宿からピックアップにてバンコク行きのバスが停車しているところに向かい、バスに乗り込む。
 
 
国境の町、ポイペトでバスは停車。
バスから降りてイミグレに向かう。  
 
 
腹に爆弾(アメーバの卵)を抱えたままのタイ入国である。
 
 
とうとう俺も密輸に手を染めてしまったよ……。
(´Д`)
 
 
 
入国審査を終えて、そこからミニバンで約6時間掛けてバンコクに到着。
 
 
 
 
 
 
いやー、やっぱりバンコクめっちゃ都会。
 
地下鉄が開通し、高層ビルが建ち並び、高級デパートやシティリゾートがどんどん建設されている。
 
さすがアジアの国際大都市バンコク。  
常にバブルだ。バブリーバンコクだ。
 
 
カオサンロード周辺で車を降りて、バックパックを背負って歩き出す。
 
 
 
17_1
カオサンロード
 
 
17_2
カオサンロード定番のパッタイの屋台。
 
 
 
 
 
カオサンロードとは、世界中の旅行者が集まる超有名な無国籍タウンである。
安宿、旅行会社、レストラン、バーなどがその通り一帯に集中しており、朝から深夜まで外国人旅行者で賑わいに溢れている。
 
特に日が暮れてからの盛り上がりが凄い。
 
以前、カオサンロードで宿を取ったことがあるのだが、深夜3時過ぎまで騒がしくて全く眠れなかった事があるので、カオサンロードから離れた通りの宿に泊まることにした。
 
荷物を部屋に置いた後、とりあえずカオサンロードを歩いてみた。
相変わらず外国人旅行者の人口密度半端ない。タイ人より圧倒的に多い。日本人もかなり見かける。今は春休みシーズンなので、特に学生が多い。
 
ここだけ歩くと、ここタイなのか?ここは何処の国だ? と思ってしまうほどだ。
 
服や雑貨が売られ、美容室やマッサージ店、インターネットカフェなど娯楽に富んでいる店が建ち並び、夜になるとクラブやバーも開店する。
 
遊ぶには全く困らない所だろうが、俺はこういう雰囲気は苦手である。  
 
これとは対照的な、まったりした雰囲気が好きなのである。
 
お客さんが全くいない動物園とかが好きだ。
 
カオサンロード周辺を歩いた後、その辺の屋台で晩飯を食べて宿に戻った。    
 
 
 
 
翌日、航空券を購入する為、旅行会社に足を運んだ。  
 
 
 
もう東南アジアは暑い。 暑すぎる。
(;´д`)
 
 
 
 
一刻も早く飛行機で他の国に脱出せねば。    
 
 
 
 
というかもう日本に帰りたい。
 
 
 
今帰れば涼しいだろうなー。    
 
 
 
 
 
 
 
あー、というかもう帰ってもいいんじゃね?
(´Д`) =3 ハゥー
 
 
 
 
 
自分なりにはもう充分旅したと思うし、余った金は日本での生活費にあてればいいじゃないか。 それに今の時期に帰国すれば、美しい桜景色を拝むことができるじゃないか。  
 
 
 
…………よしっ、帰ろう!日本へ帰ろう!今すぐ帰ろう!
帰国のチケット買おう!  
 
 
 
意気揚々と旅行会社の扉を開ける。    
 
 
 
そういうわけで、俺の旅はようやく終わりを迎えた。  
 
 
こんな自分に関わってくれた方々に感謝と敬意を払いたい。  
 
 
 
ありがとう!旅先で出会った人たち! 俺は帰国しても元気にやっていくよ!
(。・`ω´・。)
  
 
 
 

    17_5

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
………………いか~ん!!
 
 
 
 
 
 
あ、危ない…………。 今回ばかりはマジで旅が終わるところだった。
まだ終わらない。  
 
 
 
 
もうちっとだけ続くんじゃ (亀仙人風)
 
 
 
……………日本行きのチケットは買わない
(T^T)グスン
(本当は買いたいけど)    
 
 
 
 
 
「こんにちはー、ネパール行きの1番安い航空券をください」(号泣)
 
 
「ネパール行きですか、何日フライトをお望みですか?」  
 
 
「明日でも明後日でも、出来れば5日以内がいいですね」  
 
 
「少々お待ち下さい」
 
社員のお姉さんが電話で空席を確認する。
 
 
「お待たせしました、これが航空券の値段です」
 
 
そう言って、メモ帳に値段が書き出される。  
 
10500バーツ。  
 
高いな。  
 
 
「マジですか?」  
 
 
「マジです、安い便は満席です」  
 
 
「あー、それじゃ2週間以内だったらどうですか?」  
 
 
「少々お待ち下さい」
 
 
これで値段が変わらなかったら、中国の雲南省でも行こうかなー。またラオス北部にも行きたいし。
 
 
「お待たせしました、こちらが値段です」  
 
 
9500バーツ。1000バーツ安くなった。
 
まぁいいか、これで。  
 
 
「じゃあ、その航空券をお願いします」  
 
 
 
そんなこんなでネパール行きの片道航空券を購入。
 
 
しかし、その航空券のフライトは10日後である。 その日まで俺は一体、バンコクでどうすればいいのだろうか。
 
こんな大都会に10日もいたら田舎者の自分は発狂してしまうかもしれない。
 
 
タイの田舎町にでも行ってみるか。……でも移動費が結構かかるんだよなー。
(ー`´ー)ウーン  
 
 
どうしようか考えながら歩いていた時のこと。  
 
 
「何しよっと?」
 
 
ん?何処かで聞いたことある熊本弁。
 
 
振り向くとそこにユウキさんがいた。
チェンコンのパパイヤウィレッジで何日か一緒に過ごしたユウキさんだ。  
 
 
 
「ありゃー、ユウキさん」
Σ(・ω・*ノ)
 
 
チェンコンで会った頃より顎髭が伸びていた。
 
 
「また会えるとは思いませんでしたよ。というかユウキさん、インドに行くって言ってませんでしたか?」  
 
 
「あぁ、行くの止めた」(`‐ω‐´)  
 
 
「止めたんかい!」Σ(´д`)  
 
 
「エネルギー使うからねインドは」  
 
 
チェンコンからラオスに行き、その後、中国をブラブラしてたらしい。
9日後には帰国するとのことだ。
 
 
 

  17_3
タイのドナルド      

 

 

 

 

そして、バンコクに滞在して1週間が経過した。  

都会が苦手だとか、なんだかんだ言っていたが、なんとか過ごせるものである。  

 

1週間何をしていたかというと、まだ腹の調子が悪かったので病院に薬を貰いに行ったり、ユウキさんの買い物に付き合ってショッピングモールに行ったり、土日限定の規模が大きいマーケットに行ったり、カオサン周辺の喧騒から逃れる為、比較的静かなマレーシアホテル周辺に宿を取ったり、適当にバスに乗って何処かに行ってみたり、水上ボートに乗って風を感じてみたり、モノレールに乗って「モノレール凄ェ!モノレール凄ェ!」とはしゃいでみたり、ただひたすら1日中寝ていたりしていた。

 

方向音痴な俺には、バンコクの都会の道はよく分からなかったが、そこはユウキさんのサポートでなんとかなった。  
 
これで俺は田舎から上京しても、ちゃんと地下鉄を使うことぐらいはできるだろう。  
 
ユウキさんには、お世話になった。    
 
 
 
 
 
そしてネパールに向かう日がやってきた。
 
エアポートバスで空港へ向かう。
 
チェックインカウンターで搭乗手続きを済ませて、手荷物検査。
 
コンベヤーに自分のサブバックが乗せられ、機械に通される。
 
その直後、係官の人に声を掛けられた。
 
「君、ちょっと来てくれる?」
 
 
……なんだ?(´д`)?  
 
 
「このバッグを開けてもらえますか?」  
 
 
はぁ、別にいいけど。
……俺何か悪いことしたか? ドラッグやら生き物をバックに詰めて密輸するようなことはしてないぞ。  
 
 
係官の指示に従い、デイバッグに掛けてあるダイヤル錠を外してバックのファスナーを開ける。
係官がデイバッグの中身をさっさと出していく。  
 
 
「これは危険物ですね」
 
 
  係官の手に自分が愛用していた折り畳みナイフが握られていた。
 
 
あっ、しまった!Σ(; ・`д・´)
ナイフ、サブバックの中に入れっぱなしだった!   
 
 
 
「これは機内に持ち込み禁止です、廃棄します」  
 
 
「ちょ、ちょっと待って下さい!そのナイフは大事なものなんです!捨てるのはやめて下さい!」  
 
 
「規則ですので無理です、廃棄します」  
 
 
「俺はナイフを使ってハイジャックなんかするつもりはありません!捨てるのはやめて下さい!」  
 
 
「規則ですので無理です、廃棄します
 
 
マジでお願い!マジでお願い!捨てないで!」  
 
 
「規則ですので無理です、廃棄します」  
 
 
係官はそう言って、折り畳みナイフをゴミ箱に放り投げた。  
 
 
フィニッシュ、もう行っていいですよ
 
  全く表情を変えず、係官は言った。  
 
 
…………な~にがフィニッシュだ!
この鉄仮面(無表情なので)がァァァァァッ!!
それでも微笑みの国と呼ばれている国に住む者かァァァァァッ!
うがああああああああああああああ!!
(# ゚Д゚)
 
 
 
 
心の中でそう言い放ちながら、出国審査を済ませた。
 
 
……折り畳みナイフ。 今回の旅からの3ヶ月という短い付き合いだったけど、凄く役に立ってくれたナイフ。 ナイフ部分で果物の皮を剥き、ハサミ部分で紙を切り、缶切り部分で缶詰を開け、栓抜き部分で瓶の王冠を外し、ドライバー部分は特に使用せず、色々お世話になったね。 ありがとう折り畳みナイフ。  
 
 
 
はー、マジでへこむわ。 あのナイフ3000円したのに……。
(T^T)

   

 
 
そして、フライト時刻までの待ち時間でのこと。
 
後ろからちょんちょんと肩を突かれた。
 
何だ?と後ろを振り向く。  
 
「あー!やっぱりぃ!似てる人がいるなーって思ったら、やっぱりだー!」
 
  肩を突いてきたのは、明るい雰囲気を纏った、茶髪の小柄な女性だった。
 
 
「ありゃ。また会いましたね」
(・ε・)  
 
 
これまでの旅行記には書いていなかったがこの女性、カンボジアのシェムリアップの同じ宿に泊まっていて、同じ日にバンコクに行き、その日の夜、カオサン通りの屋台でばったり出くわした女性である。
 
ミャンマーに行った後、ネパールに行くとは言っていたが、同じ日に行くことになるとは思いもしなかった。  
 
 
「ミャンマーには行ってきたんですか?」
 
 
  「うん、行ってきた。凄く良かったよミャンマー」  
 
 
「そうですかー、で、今からネパールですね」  
 
 
「だね、同じ日に行くとは思わなかったねー。びっくり」  
 
 
「そうですね、運命感じちゃいますね
(`・ω・´)キリッ  
 
 
「いや、そんなことは全く思わないけど
( ・`д・´)  
 
 
 
  この人の名前はメグミさん。オーストラリアでワーホリしたり、中東や南米を旅したりと、可愛らしい外見に似合わず、もはや旅の猛者である。
 
 
 
フライト時刻になり、飛行機に乗り込む。  
 
「お飲物は何に致しますか?」
 
スチュワーデスのお姉さんが自分に尋ねる。  
 
「ワインだ!ワインをくれ!」  
 
 
やけ酒じゃぁぁああ! 酒飲んで折り畳みナイフのことを忘れたいんじゃぁぁあ!
( ゚Д゚)

(まだ引きずっている)  
 
 
 
……しかし何はともあれ、色々あって楽しい旅だったな。
 
 
ばいばい、東南アジア。
 
 
(ネパール編へ続く)

 

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