いざ避暑地へ行かん(旅行記42話)

 

日が昇ると気温はグングン上昇し、苛烈な暑さがやってくる。

 

アンバラのバスステーションに到着後、水分補給をしながら自分はしばし考えた。


ヒマーチャル・プラデーシュ州の何処へ行こう…?
(‐ω‐)


とにかくこの暑い地域から離れたいがために、ヒマラヤ山地に向かおうと決心していたのはいいのだが、そこから先の行き先を全く決めてなかった。

 

地図を見るとアンバラの一番近くの避暑地に、シムラーという町がある。
ただ、リゾート地ということなので物価が高いかもしれない。


うーむ、物価が高いのは困るな……。
他に良さそうな場所はないか……。
(・ω・`)


そう考えながら地球の歩き方のページを捲っていると、ラダック地方のページに目が止まった。

 

ヒマーチャル・プラデーシュ州の更に北にあるインド最北の地ジャンムー・カシュミール州。
ラダックはチベット仏教文化が根強く息づくインドのなかの異郷の地と記されている。
ラダック主要の町、レーは海抜3500m。


………標高高いと涼しいだろうなー。
(´ω`)


よし、ラダックに行こう!(即決)
(。・`ω´・。)

 


ただ単に涼しい場所に行きたいという理由で、行き先はラダックに決まった。

 

42_1
アンバラのバスターミナルの商店の若い店員。
「アンバラに来たら是非立ち寄ってくれよなっ!」(`・ω・´)キリッ

 

 

 

陸路でラダックへ至るルートはヒマラヤ山地の谷間にある町、マナリからバスかジープで北上するのが一般的みたいである。

自分もこのコースでラダックへ向かうことにした。

 

なので、まず目指すべきはマナリだ。

 

「すいません、マナリへ行くバスはどれですか?」
(・ε・)

 

バスステーションにいた人達にマナリ行きのバスはあるか尋ねる。

 

「マナリ行きか?あのバスだよ。1時間後ぐらいに出発だ」

 

運賃を支払い、バックパックを上の荷台に乗せてもらってバスに乗り込んだ。

 

午前9時前にバスはマナリへ向けて出発した。

相変わらず車内は灼熱地獄。
それに加えて車内の人口密度は200%である。

 

暑ぃ……
(;´д`)ゞ

 

バスの窓を全開にしているが、ねっとりとした生ぬるい風が吹き付けるだけで全く涼しくない。

 

まぁ窓を閉め切っているよりは大分マシだが。

 

俺は子どもの頃、台風が近づくたびに傘を持って外出し、おもいっきりジャンプした瞬間に傘を開き一瞬だけ風に乗るという遊び傘が折れるまで行いその都度親にこっぴどく叱られたことがあるくらい風を感じることは大好きな人間だが、それはあくまで爽やかな涼しい風であることが前提だ。

 

このムワッとした生ぬるい風は好きになれん。


あぁぁぁ〜〜〜〜〜〜。風がぬるいぜぇ〜〜〜。
赤ちゃんに飲ませるミルクぐらいぬるいぜぇ〜〜〜。
(;´д`)

 

しばらく公道を走り続けた後、バスは山岳地帯に入り、ダムを越えてV字谷を上っていく。
車窓から外を眺めると、ヒマラヤから運ばれてきた水が川となり、山々には緑色の木々が生い茂っている。
平地にいた時と打って変わって、開けた窓からはひんやりとした涼風が流れ込んでくる。


あぁ〜涼しい。やっぱり山は落ち着くのう……。
(‐ω‐)

 

 

 

バスは谷間の山道を走り続け、長いトンネルを越えると、深い緑色の高い峰々が姿を現した。

それから1時間ほどして、クルの町のバスターミナルでバスは停車した。

バスの乗客は全員ここで降車していく。


ありゃ?もしかして終点?
(・ε・)


「運転手さん、ここで終点ですか?」

 

「あぁ、そうだよ」

運転手が答える。

 

どうやらここで終点のようだ。

 

マナリ行きじゃなかったんかい……。
(´・ω・` )

 

目的地のマナリはクルから更に北へ38kmほど登ったところだ。

マナリ行きのバスに乗ろうかと考えたが、時刻は午後7時前ということもあり陽が沈み始めている。

マナリに到着する頃には、完全に日も暮れているだろう。

 

というか、移動の連続で疲れた。
( ´д`)

 

丸2日、激烈な暑さの中の移動だったため体が汗臭くてかなわん。

早く宿でシャワーを浴びて床につきたい。

今日はクルで宿を取ろう。

 

 

42_3
川で洗濯する人。

 

 

バックパックを背負って町の中心部へ向かう。

ホテルと書かれた看板が掲げられている建物があったので、そこに入り値段を尋ねてみた。

 

「すいませーん。部屋空いてますか?」

 

「空いてるよ」

 

「1泊いくらですか?」

 

「800ルピー」(約1300円)


高ッ!!Σ(・д・)


「あのー、1番安い部屋がいいんですが……」

 

「1番安い部屋は500ルピーなんだが、今は空いてないんだ」

 

「そうですか……」

 

他をあたると伝え、別の宿も訪ねてみたが値段は大差ない。


うーむ……。
長いことネパールの安宿に泊まっていたもんだから、ここら辺の宿泊費が高く感じるな……。
(・ω・`)


町の中心から離れれば、今よりは安い宿があるかな……。

 

そう考え、町の外れにあるホテルを探し始めた。

 

日が暮れて辺りが暗くなる前には見つけたい。
まぁ見つからなければ最初の宿に戻ればいいだけのことだ。

 

そう思いながらマナリ方面へ至る道を歩いていく。

 

予想は的中し、1泊280ルピーの宿を見つけることができた。
ベッドも清潔で、ホットシャワーも出る。

 

連日の移動の疲れもあって、シャワーを浴びた後はすぐに深い眠りに落ちた。

 

 

42_2
この谷に住んでいる山地民は平地の人々とは異なる服装をしている人も少なくない。
女性は頭をスカーフで覆い、男性は平らな丸帽子を愛用している。

 

 

 

翌日、クルの町を散策してみた。
クルの標高は1200m。
ヒマラヤ山地の谷間にある町である。

 

周りが山に囲まれているということもあり、緑豊かな場所だ。
透明色の澄んだ水が川となって流れている。

 

その川岸の向こう側には木材で組まれたみずぼらしい小屋がいくつも立ち並んでいた。
雨が降った時に備えて、ビニールシートやトタンが被せられている。
その場所を見下ろすかのように、山の中にある団地には裕福な人間が住んでいるような住宅が建ち並ぶ。


川岸の向こう側へ渡る橋を越えて、木材小屋が建ち並んだ場所へ足を運んでみた。
橋を渡らなければ、ここは絶対に来ることのない場所だ。

 

こういうところから、インドのカーストを直に感じる。
法的にはカースト制度は存在しないことになっているが、まだまだカースト制度は根強く残っている。

 

「ハロー、こっち来いよ!」

 

川のほとりをのんびりと歩いていると、とある青年が声を掛けてきた。
芋虫のような濃く太い眉毛が特徴的な外見の青年だった。

 

太眉の彼に着いていくと、掘っ立て小屋の前に案内された。

小屋の中を覗くと、お菓子やタバコが置かれている。
どうやらここは商店のようだ。

 

商店の軒先には、腰掛けるのに丁度いい大きさの岩があり、それにダンボールを敷いて男達が談笑していた。

 

「チャイ飲む?」

 

そう訊かれたので、ありがたく頂くことにした。

 

「君の名前は?」

太眉の青年が尋ねてきた。

 

「大悟」

 

「そうか。俺の名前はビジ。大悟は日本で何をやっているんだ?学生か?」

 

「んー、今は無職だよ。ただの旅行者さ」

 

「旅行者か、いいねぇ。俺は靴の修理屋だ」

 

「へぇー」

 

そういえば、インドでは靴の修理屋によく声を掛けられるな。
(・ε・)

 

靴の修理しないかと、ビジに言われたが自分の履いているサンダルは全く問題ない。

 

「修理するところがない」

 

そう言うと、ビジは

「そうか」

と気の無い返事をした。

 

「ところで……」

と、ビジは話を変える。

 

「大悟はガンジャやチャラスをやるのか?」

 

「俺はマリファナはやらないよ。タバコも吸わない」

 

「そうなのか?珍しいな、この近辺に来る外国人はマリファナを嗜む奴が多いけど」

 

ビジの言う通り、クルやマナリ界隈では良質な大麻が容易に入手できることもあり、それを目当てに滞在する旅行者がかなり多いと聞く。

 

インドでも(一応)大麻の売買は違法なのだが、手を出す旅行者が後を絶たない。
しかし稀に、運悪く警察に捕まり刑務所送りになる人もいるようだ。

 


42_4
靴の修理屋、ガンジャ大好きビジ

 

 

 

「ビジはガンジャやチャラスをやるの?」

 

ビジにそう訊ねると

「時々ね」

と彼は答えた。

 

「いい気分になるんだよ」

そう言いながら、ビジは頭部をくるくると指差す。

 

「もしガンジャやチャラスが欲しかったらいつでも言ってくれよ。ベストプライスで売ってやるから

 

にこやかな表情でビジは言った。

 

いやそんなにこやかな顔して言われても絶対買わんけどな。
( ´д`)

 

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42_5
商店の近くで河原に住む人たちと撮影。

 

 

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