レンタサイクルをして町を回ってみることにした。 自転車だと徒歩より行動範囲がかなり広がるので色んな場所に行けるのである。 自転車を走らせていると「サバイディー!(こんにちは)」と元気よく挨拶をしてくる子供もいる。
手招きしてくる子がいたので、その子に着いていくと小学校に案内された。 カメラをぶら下げた外国人を勝手に入れてもいいのだろうか? 日本だったら完全にアウトだ。
恐い警察官に連行され、メディアに袋叩きに遭い、ネット上に顔写真が流出し、キモオタロリコンのレッテルを貼られ、社会復帰できなくなる。
そう思ってるうちに自分の周りにずらずらと子供達が集まってきた。
「お菓子ないー?」
「お菓子は持ってないよ」
「お金くれ」
「お金はやらん」
挨拶代わりに物をせびるのはお約束みたいなものだ。
「ほら、カメラ貸すから好きなだけ撮ってきな」
そう言ってカメラを子供に渡すと、壮絶な奪い合いが始まった。
僕が先に撮る!いや僕が先だ!僕にもカメラ触らせろ!いや僕だ!サングラス頂き!僕を撮ってくれ!
……カメラが壊れそうだ。
しばらくカメラ争奪戦は続いていたが子供は大抵飽きっぽい。
「センキュー」
1時間ほどして、男の子がそう言いながらカメラを返しにくる。
誰だァァァァ!
一応日本人代表として、他人の所有物に鼻クソを付けてはいけないということを子供達に熱心に指導しておいた。
町から離れるように舗装されていないデコボコの道を進んでいくと、川で水遊びをしている子供たちがいた。
「おーい!写真撮ってよ!」
そのようなことを言われたので、カメラを構えると、どんどん撮ってくれと子供たちはカメラの前に出しゃばる。
凄いな。全く恥ずかしがらない。
ただ、「僕の局部を撮ってくれ!」と、パンツを脱いでおちんちん丸出しで迫ってくるのはやめてくれ。
さて、もっと先の道に行くか。 そう思って自転車に乗ると後部座席にチョコンと男の子が乗ってきた。
「ん?後ろに乗りたいのか?」
男の子はあっち、あっちと指差して行きたい方角を示しているみたいだ。 とりあえず指差す方角に自転車を走らせる。
15分経過。
「まだ行くの?」
そう尋ねると子供は「まだ先!」と言っているみたいだ。 やや上り坂だから自転車漕ぐのしんどいんだよな。
更に15分経過。
ハァハァ、ゼェゼェ……、もう駄目だ、疲れた。太腿がパンパンだ……。
ずっと緩やかな上り坂な上、デコボコ道。おまけに乗ってる自転車はマウンテンバイクのように山道に適したものではなく普通のママチャリである。
「キュピー、乳酸漬けだよー。苦しいよー」
俺の可愛い太ももの筋肉の悲鳴が聞こえてきた。
もう引き返そうかな……。
いや、ここまで来たんだからあと少し進んでみよう。
そう決心して数分後。 遠くに木造の家々が並んでいるのが見えた。
ん?何か見えてきたぞ、あれは集落だな……。
それにしても今の自分は汗ビッショリである。
喉渇いた……。
集落に入るといかにも世界ウルルン滞在記に出てきそうな感じの光景が目に映った。
おぉー、ここが山岳少数民族の方々が暮らしている村かー。(・∀・)
少数民族といっても、宿の入り口近くにいるおばあちゃん達みたいに民族衣装を着てるわけではない。(まぁあれは商売用に着ているだけだろうし) どうせなら綺麗な若い人もおっぱい丸出ししてほしい……。
村の中心部に石造りの水道があり、湧き水が絶え間なく流れ出ている。 喉が乾いていたので、ゴクゴク飲んで喉の乾きを癒す。
ぷはーっ。旨ェー。
そういえば浅利さんが 「ビアラオが美味しいのは製造過程が特別なんじゃなくて、単純に水が美味しいからなんだよ」 って言ってたな。 納得した。
村の中を歩いて、すれ違う人に挨拶してみる。 笑顔で挨拶してくれる人もいれば、警戒されているのか全然挨拶を返してくれない人もいる。
まぁ確かにいきなり外国人が村の中に入ってきて挨拶をしても「なんだこいつ?」と思われるのは当たり前なことだ。
さて、村は一応見れたことだし戻るか。 そう思い、自転車を停めたところへ引き返している途中、一人の若者が近づいてきて声をかけてきた。
「ヌゥーンシンマンカゥボッタファオナカポヨポヨ」
……何言ってるかさっぱし分からん。
簡単な英語も通じず、唯一通じた英語は「OK」だけだった。 まぁそれでもジェスチャーで意志疎通は辛うじてOKだ。
どうやら村の中を案内をしてくれるようだ。 彼の名前は、ダーと言った。好奇心旺盛な若者のようだ。
「外国人さん、サトウキビ食べる?」
村人にサトウキビを差し出される。サトウキビは初めて食べてみたが、甘くて美味しい。 色々と案内をしてもらって、ダーに礼を言って集落を出た。
帰りはほとんど下り道なのでかなり楽だ。
ある晩、老夫に女性の口説き方を伝授された。 その老夫とは托鉢祭りの時に出会ったイタリア人の男性のことである。
「ハッハ、君は写真を撮っているんだろう。スライドショーにして女性に見せればいい。ハッハ」
レストランで自分の正面の席に座っている老夫が口にした。
「はぁ……、どうしてですか?」
老夫は静かに微笑みながら答えた。
「ハッハ、女性は旅する男に弱い。異国の地の写真やビデオを見せながら「今度はあなたと一緒に旅に出たい」と言えばいい。いいムードになる」
「はぁ……、そうなんですか」
「私の女性の口説き方だ。今度試してみるといい、ベッドイン確実だ。ハッハ」
ホントかよ……。
俺が唯一、気軽に話せる女性はニンテンドーDSゲームソフト、ラブプラスの姉ヶ崎 寧々先輩だけである。
老夫はレストランのメニューを見て、プレーンライスを注文する。 プレーンライスが運ばれてくると、老夫はそれにオリーブオイルをドバドバとかけていた。 その量たるや、MOCO’Sキッチンの速水もこみち以上である。
……オリーブオイルかけ過ぎじゃないか?Σ(・д・)
ライス全体がオリーブオイルでギラギラと輝いている。
「おじいさん、オリーブオイルかけ過ぎじゃないですか?」
「ハッハ、何を言ってるんだジャパニーズボーイ。適量だろ」
「そうですかね……」
「私はオリーブオイルが無いと生きていけないさ。ハッハ」
そう言っていたことから、俺はこの日から老夫を『オリーブイタリー』と呼ぶことにした。
オリーブイタリーとはムアンシンの中心部から12kmほど離れた村の近くで、遭遇したこともある。 ここまで歩いてきたとオリーブイタリーは言っていた。
「こんな遠くまで歩いてきたんですか?」
「ハッハ、私はいつもこのくらい歩いているさ。常に足腰を鍛えて体力をつける。でないと女性を口説けないし、夜の相手もできないだろう。ハッハ」
「おじいさん、お若いですね」
「私は今年で70歳だが、そんなの関係ない。年齢は単なるナンバーだ。ハッハ」
「歩いて町まで戻るのが大変ですね」
「ハッハ、そんなことない。女性を口説くのと同じぐらい容易なことだ。君も自転車を使わず歩いてみたらどうだね?」
「え〜、疲れるから嫌です」
「ハッハ、そんなことじゃ女性を口説けないぞ。ハッハ」
なんでやねん。 そんな思いは後日、現実となる。
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超インドア派。妄想族である。立ち相撲が結構強い。
好きなTV番組は「SASUKE」。