Its OKおじさんの件があってから数時間後、ラマホテルに到着。 標高2340m。トレッキング初日に泊まったシャブルベシのような村ではなく、ただの宿泊ロッジが並んでいるだけという所だ。
……静かだ。
隣の部屋の欧米人女性グループの話し声が聞こえる。
「静かだねぇ、隣の話し声がよく聞こえる」
ベッドに仰向けになり、天井を見上げている大輔さん。
「大悟君どうだった?今日のトレッキング」
「思った以上にきつかったですね」
「俺もだよ」
「明日筋肉痛かもしれないです」
そんな会話をしながら眠りについた。
トレッキング3日目。 朝食の後、ラマホテルを出発。 昨日かなり汗をかいたからか、すこぶる体の調子がいい。 大輔さんは少し、しんどそうに歩いている。
「大悟サン、ユックリユックリネ」
後ろからラムさんが、声を掛けてくる。
「あ、はい」
少し歩くペースが速かったか…。
ペースを落として樹林帯の道を歩いていく。
昨日と同じく、歩き始めると汗がすぐに湧き出てくる。
「大輔さん」
「ん、何?」
「トレッキングって、一応、登山の部類ですよね」(・ε・)
「まぁそうなるんじゃないかな」
「登山といえば雪山ですよね」(・ε・)
「連想させるのは、まずそれだね」
「そう。それなのに歩けど歩けど樹林帯!」
「………………………………」
「今も樹木の枝葉に遮られて空はあまり見えてないです!」
「山だもん。仕方ない」
「歩かないで一気に雪山まで行けたらいいのになー」(・ε・)
「徐々に変わっていく景色を楽しむのがトレッキングだよ」
「大悟サン、大輔サン」
「何ですかラムさん?」
「アレ」 そう言って、ラムさんが樹間を指差す。 その先には巨大な白い峰が静かに佇んでいた。
「ランタンリルンデス」
「雪山見えたね、大悟君」
「おぉー、あの山を登りたいですねー」
「ランタンリルンハ、7000mダカラ無理デス」
……ラムさん、冷静かつ的確なツッコミをありがとう。
そこから1時間半程歩くと、背の高い樹木が少なくなり低木が増えてきた。樹林帯を抜けたようだ。それは標高が上がってきたということを意味する。 その先にあるロッジで昼休憩をとる。
ん、少し肌寒いな。
歩いてる時は暑いのに、止まると急に寒くなる。
「寒っ、さっきまで暑かったのに」
「標高が高い所だから結構気温は低いんだろうね。逆に太陽は近いから、日差しは暖かいけど。着替えないと汗で体冷えちゃうな」
2人共、汗でぐっしょり濡れた着ていたTシャツを脱いで、別のTシャツに着替える。
何だ?
音が聞こえる方角を向くと、ヘリコプターが飛んでいた。
あ、ヘリだ。(・ε・)
「レスキュー」 ラムさんが言う。
「エベレストトレッッキングデハ、イツモ飛ンデル」
「そうなんですか?」
「高山病ニナルヒト多イネ」
「死んだ人もいるんですか?」
「ハイ、少シイル」
「このランタンコースは?」
「アマリイナイ」
「メグミさんが行ったのってエベレストコースだったよね」
「そうですね。…………今のセリフ、メグミさんの死亡フラグ立ったみたいですね」(涙)
「そういうわけじゃないけど。まぁ大丈夫じゃないのあの人は」
「大丈夫かなー、メグミさん」( ´д`)
昼休憩を終えて、再び歩き出す。 標高は3000mを超え、どんどん周りの景色の見通しが良くなってきた。 チェックポストを過ぎて約3時間後、ランタン村に到着。
村に到着したと同時に、霧が立ち込め始めた。
ランタン村はチベット系の人々が暮らしており、石造りの建物が多い。
宿に荷物を置いた後、大輔さんと会話しながら村を歩いていると村のおじさんが大きな声を発しながら、ヤクを使って畑を耕しているのを見かけた。
体重の重いヤクに土を何度も踏ませ、掘り返す作業を繰り返しているのだ。
「おぉー、かっちょええ〜」
改造したフランキーを見つめるルフィのようなキラキラした目で、その作業を眺めていると、おじさんが声をかけてきた。
「お〜い、そこの兄ちゃんたちよ、こっちに来んさい」 そう言われたので、おじさんの所に行ってみる。
「兄ちゃん達、何人だい?」
「日本人です」
「おぉ〜日本人かぁ〜。明日は何処に行くんだぃ?」
「キャンジン•ゴンパってところに行きます」
「おぉ〜、キャンジン•ゴンパね〜。あそこはいい所だぞ」
ニカッっと口角を上げておじさんは笑う。
「兄ちゃん、手を見せてくれないか?」
「手ですか?はい」 手をパーに開いて見せる。
「はぁ〜君達の手は綺麗だな〜。羨ましい。見てくれ、俺の手はこんなに格好悪い手をしてる」
それは目視しただけでも分かるくらい、指の一本いっぽんが分厚い皮膚に覆われており、大きな褐色色の手をしていた。
おじさんは自分の手が格好悪いと言ったが、俺は全くそうは思わなかった。 これは毎日働いている人の力強い大きな手だ。
「そんなことないぞ!おじさん」 大輔さんが言う。
「あなたの手は凄く格好いいよ。本当に頑張っている人の手だ!俺達の手なんかよりよっぽど格好いいよ!」 大輔さんは真剣におじさんにそう言っていた。
大輔さん……。俺、今まで大輔さんのことをただのエロ賢い人だと思ってたけど、真っすぐな人だったんですね……!
「そうそう、おじさんの手は本当に格好いいよ」
「おぉ、そうかそうかぁ〜。ありがとうよ兄ちゃん達。そうだ、いいものがあるんだ。飲んでみるかぃ?」
おじさんは横に置いてあったバックから白濁色の液体が入ったペットボトルを取り出した。
「これはチベットの酒さ。そんなにアルコールは強くないから沢山飲めるぞ。兄ちゃん達も飲んでみんさい」
「いいんですか?頂きます」(・∀・)
遠慮なくグビグビ頂く。
「ぷは〜っ!やっぱ山登りした後の酒は最高ですね!五臓六腑まで染み渡る!」
「あのー、大悟君」
「なんですか?大輔さん」
「それ飲んでお腹壊したりしないかな?」
「んー、多分大丈夫ですよ。おじさんの酒ですから。大輔さんは飲まないんですか?結構イケますよこれ」
「俺は酒飲めないんだよ」
意外にも大輔さんは下戸であった。
「美味い酒だろぉ〜。酒は飲んだら体が健康になるんだ。俺は今日3本飲んだぞ」(`・ω・´)
ニカッっと歯を出し、笑いながらおじさんは言う。
いや、1.5リットルのペットボトル3本は飲み過ぎだろおじさん!
肝臓には気をつけなはれや!
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超インドア派。妄想族である。立ち相撲が結構強い。
好きなTV番組は「SASUKE」。