「エクスキューズミー、君に訊きたいことがあるんだがいいかな?」 ジュンベシからヌンタラという村へ移動して、宿泊してあるロッジで昼食を摂っている時に若い西洋人の男性に話しかけられた。
「うん。いいけど」
「君、さっきこの村に住んでいるネパール人と色々話していたよね。ネパール語話せるの?」
「いや、話せないけど」
「え、話してたように見えたけど」
「自己紹介と簡単な挨拶だけしか話せないよ」
「そうなのか。せっかくだからネパール語を教えてもらおうかと思ったんだけど」
いや、それなら英語があんまり話せない俺に聞くより英語がペラペラなロッジのオーナーに教えてもらえよと思ったが、男性は話を続けた。
「いや、まぁそれはいいんだ。それよりも聞きたいことがある」
男性の話を聞くと、さっき俺が子供と戯れながら写真を撮っていたのを見て、どうやったらあんなに親しくして写真を撮らせてもらえるんだろうかと思ったそうだ。
彼はこの先にあるナムチェから下ってきたらしいが、そこで人物の写真を撮ろうとしたら、「写真撮るなボケッ!」みたいなことを言われたらしい。
「別に黙って撮るわけじゃないのにかい?」
「だって見ず知らずの外国人が、いきなり目の前に来て母国以外の言葉で喋ってきたらびっくりすると思うよ。特に小さい子供は」
「ヘーイ!メイアイテイクユアピクチャー!?」とか言われたら泣く。
「「こんにちは」「僕は◯◯人です」「名前は◯◯です」「あなたの名前はなんですか?」「写真撮ってもいいですか?」これだけはネパール語で言うようにしているよ。それとなるべく自分から英語は話さない。とにかくいきなり写真は撮らない」
「ふむふむ、なるほど。ありがとう。やってみる」
男性は「こんにちは」「僕は◯◯人です」「名前は◯◯です」「あなたの名前はなんですか?」「写真撮ってもいいですか?」の単語をメモ帳に書き、意気揚々とロッジを出ていった。 面白そうなので男性の後を尾けてみる。
側を通りかかった子供を呼び止め、なんか必死で彼は喋りかけているが、子供はキョトン( ´д`)?とした表情である。
あまりに必死すぎて、眉間に皺寄せてニコニコ笑ってるので逆に怖いな。
それでも快く写真を撮らせてくれる女の子。 こういうのってほのぼのしてて、なんかいいなって思った。
トレッキングも10日が経過し、カリコーラの村に到着した。
村をテクテク歩いていると、ネパリ帽子を被ったおじさんが声を掛けてきた。
「こんにちは。この村にはいつ来たんだい?」
「昨日来ました。いい村ですねここ」
「おぉ、そうかい。ありがとう。ところで君知ってるかい?今日は正月だってこと」
「え、そうなんですか?」
おじさんの話を聞くと、ネパールは4月に正月を迎えるらしく、今日の正午から村の広場で新年の祝いをするそうだ。
「参加料が300ルピーするんだが、よかったら君も来ないかね?」
「いいんですか?行きます行きます」
「じゃあ後で君の宿に迎えに行くよ」
おじさんに泊まっている宿を教えて、一旦宿に戻る。 サンタさんも話を聞いたらしく、参加するそうだ。
「お酒むっちゃ飲めるからね」
やっぱ酒目当てかあなたは。
1時間後、おじさんはスーツに着替えて宿にやって来た。
「やっぱりめでたい日は正装じゃないとね」 にこやかにおじさんは言う。
村の寺院の裏にある広場に案内されると、そこでは村の人々がたくさん集まって談笑していた。衣装を着飾った人も多い。 広場の奥の方では、大きな鍋で豚肉が豪快に煮られている。
おぉ、凄い肉の量。
普段、肉は滅多に食べないが、今日みたいにめでたい日はたっぷり食べるそうだ。
祝いが始まると、豚肉とプーリー(チャパティと同じ全粒粉の生地を薄い円形にのばし、油で揚げたもの)とチュウラ(米をボイルして天日干しで乾燥させ鍋で煎ったもの)が皿に盛られ1人ひとりに配られる。
「お酒は飲むかい?」
「えぇ、頂きます」
コップの代わりの木造のお椀にロクシーがたっぷりと注がれる。 周りの人と乾杯をして食事を摂る。
久しぶりに食べる動物性たんぱく質は凄く美味しい。
お肉が実に上手に焼けてるぜ〜!
しばらくすると置いてあるラジカセから音楽が流れ始めた。
「今からダンスタイムだ!さぁ踊ろう!」 おじさんが言う。
ダンスの曲によって、男性だけが踊る曲や女性だけが踊る曲、年配の方だけ踊る曲もあった。 踊らずに酔い潰れてそこら辺で眠っている人もいる。
「ほらほら、もっと酒飲みなよ」
自分と同年代ぐらいの若者が酒をついでくる。 真昼間からめちゃ飲まされるな。
そのまま時間は過ぎていき、夕方になった。 夕食はダルバートが配られた。 自分の周りに酔っ払った若者が集まって色々と質問をされる。
「何処から来たんだ?」 「恋人はいるのか?」 「年齢は?」 「なんでネパールに来たんだ?」 「この村は好きか?」 「日本って何処にあるんだ?」 「宗教は?」 「日本にもダルバートやロクシーはあるのか?」
質問にひとつひとつ答えるたびに、持っているお椀にロクシーが注がれる。
「いやいやいやっ、もう飲めないよ!」
そう返事をするが、「君なら飲めるさ!」と笑いながら若者は言う。
何を根拠に言ってんだ。
昼からずっと飲み続けていることもあり、さすがにこれ以上飲むと記憶がぶっ飛びそうだ。
ぐでんぐでんに酔っ払っているサンタさんが日本語で怒鳴ってきた。
「これ飲メナカッタらアナタ男ジャナイデスヨッ!チンコ付いてる意味ナイデスヨッ!!」
仕方ない…、一気飲みは嫌いなんだが……。
「うぉぉぉおおッ!いいぞッ日本人!!」
日が暮れると、ラジカセからクラブでかけているような音楽が流れてきた。
「ネパリディスコだ!イエーイッ!!」
若者たちは酒が入っていることもあってやたらテンションが高い。
「さぁ日本人の君から踊れッ!」
俺からかよッ!
もう投げやりで適当に踊る。
「うぉぉぉおおッ!いいぞッ日本人!!」
どうじゃあッ!日本人の力を見たかァァァァッ!!
差し出されたロクシーをまたもや一気に飲み干す。
「うぉぉぉおおッ!凄ェぞッ日本人!!」
どうじゃあッ!これが日本人の力じゃああああッ!!
「最高じゃあ!うぉぉぉおおおおッ!!」
「最高じゃあ!うぉぉぉおおおおッ!!」
「最高じゃあ!うぉぉぉおおおおッ!!」
「最高じゃあ!うぉぉぉおおおおッ!………じゃなくて出来るかァァァアアアッ!!」
「君ならできるさッ!レッツ トライ ファック!!」
「出来るかァァァアアアッ!!うぉぉぉおおおおッ!!」
狂乱の宴は深夜まで続いた。
翌日。
あぁ〜。二日酔いだ。頭痛い……。動きたくない……。
お腹の調子もすこぶる悪い。 急性アルコール中毒にならなくてよかったわ。 というか、宿に戻った時の記憶があやふやだ。
「真っ暗で道が分からねえぜ!うひゃひゃひゃひゃひゃ!ヒャッハーッ!」
とか言いながら帰ったような気がするが。
サンタさんも見事なまでに二日酔いだった。
「頭痛いです……!動けない……!」
そう呟くだけで、絶命した芋虫のように横たわっているサンタさん。
ガイドがそんなになるまで飲むなやッ!!
2人とも、この日はロッジでダラダラ過ごしていた。
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超インドア派。妄想族である。立ち相撲が結構強い。
好きなTV番組は「SASUKE」。