ドーレから丘を登っていきロッジが4軒あるマッツェルモに到着。標高は4410m。 本来ならここに1泊して高度に体を慣らしてから翌日ゴーキョに向かうのだが、まだ先に進んでも問題なさそうだ。
「サンタさん、今日ここで昼食を摂ったら、もうゴーキョまで進みましょう」
「いいけど大丈夫?」
「全然平気ですよ」
昼食後、ゴーキョに向けて歩き出す。 ゴーキョに近づくにつれて、岩場の登りが多くなってきた。 それを登りきると目の前に湖が現れた。 その先にある2つ目の湖は白く氷結していた。
「おぉ〜、凍ってる、凍ってる」
ストックの代わりにしている木の棒で氷をコンコンと叩いてみる。
結構厚いな。これ上に乗っても大丈夫じゃないか?
そう思い、氷の上に乗ろうとするとサンタさんが怒鳴ってきた。 「何をやってるんですか!?」
「いや、湖の上に乗ろうとしてたんですが」
「駄目です!死んだらどうするんですか!?」
「大丈夫ですよ。ほらこれ氷凄く分厚いですし」
「駄目です!凄くディープですこの湖!凄くコールド!」
「えー、駄目ですかー」
「駄目です。あなたが死んだら私の責任になります」
「んーじゃあ少しだけ。ここら辺の浅岸だけなら乗るのはいいですか?」
「少しだけですよ」
その後、また歩き出して3つ目の大きな氷河湖ドードゥポカリのほとりにあるゴーキョに到着した。 ドードゥポカリは、まだ半分近く氷に覆われている。
ロッジのリビングで少し休憩をとっていると、軽い頭痛がしてきた。
あぁ〜、これが高山病か〜。
といっても、そんなに大したものでもなかったので、外に出て散歩をする。
日が沈むと、一気に気温が下がる。
夕食後、部屋に戻り床につくが、寒すぎて眠れん。
超寒ィ……。
「寝るなー!寝たら死ぬぞー!」 とか言うセリフがあるが、寒かったら寝れないと思うのだが。
布団を被ってブルブル震えていると何故か今、猛烈にウンコがしたくなってきた。
よりによって、なんで今なんだよ?俺の中のウンコさん。
しかし、今はとてつもなく寒いので、ベッドから抜け出したくない。
うー、ウンコしたいー。でも布団から出たくないー。でも漏らしたくないー。でも寒いから出たくないー。ウンコは出したいー。
「出て出す」か「出ないで出さないか」の、2つの思いが頭の中を交錯し、出した結論は「自分が出せる限界のスピードでウンコをして体が冷えないうちに素早く部屋に戻る」だった。
懐中電灯も持って部屋を出てトイレに向かう。
さて、ちゃっちゃと尻を洗って部屋に戻ろう。
ここで解説。 アジアの国では当たり前だが、トイレではトイレットペーパーを使うことはない。 トイレットペーパーは一応販売はされているが、購入する客は主にトイレットペーパーを使う文化圏で育ってきた外国人である。 しかも、日本のトイレットペーパーのように水に溶けないので、水に流すとすぐに詰まらせてしまう。 なので、一般的な安宿のトイレにはゴミ箱が設置されており(ないところもある)、お尻を拭いたトイレットペーパーは、そこへ投げ入れられる。
茶色や黄土色のものがべっとりと付着した真っ白なティッシュが大量に積もっている様は、絶妙なコントラストを放っている。
ではトイレットペーパーを使わない現地の方々は、どうやって尻を拭いているのか。 答えは至極単純。
バケツに溜めてある水(もしくは横に水道がある)を容器ですくって、水を流しながら手で肛門をゴシゴシと洗うというのが一般的な方法である。 手を使って拭くというのは少し抵抗があるかもしれないが、実際やってみると大したことではない。 環境を大事にしよう!とか言っている人は外国に行ったときぐらいは、郷に入っては郷に従う精神で、この水式トイレ様式を実践してみてほしい。
俺は旅に出た時から、ずっと水式トイレ様式で過ごしていることもあり、手で尻を拭くのは文字通り、お手のものだ。
もし「ミニバケツ1杯の水で尻を綺麗に洗う日本人選手権」なるものが開催されるなら、俺は間違いなく山口県内では上位にランクインされる自信があるぐらいである。
懐中電灯を口に咥えて、右手に水をすくうミニバケツを持ち、左手を肛門に近づけ、セット完了だ。
早くしないと体が冷えて(特にお尻から)風邪をひいてしまう。とっとと洗ってしまおう。
ミニバケツで水をすくい取る。
カツンッ。
……ん?なんだ今の音?
もう一度水をすくい上げようとする。
カツンッ。
こ、この音はまさか………。
咥えていた懐中電灯を左手に持ち、水を溜めてあるバケツを照らす。
………………!!!
俺は驚愕した。
バケツ内部の水がカチンカチンに凍っていたのである。
うぉぉぉぉおおおおッ!!
尻を洗わずにパンツを履くという選択肢があるが、ウンコカスがパンツ内部にこびりつく。それは嫌だ。 ウンコが乾くまでじっとしていようかと思ったが、それも無理だ。
…………はっ!
そうだッ!アレがあるじゃないか!
万が一の為(野糞した時とか近くに水が無い緊急事態用)にバックパックに1ロール忍ばせてあったのだ。 しかし、現在俺が位置する場所は部屋から離れたトイレである。
……いや、迷っている暇はない。行くしかない。
そう決心した俺は尻を丸出しのまま、半かがみの体勢でトイレから脱出し、ちょこちょこ歩きながら部屋に向かった。
もしこの状況を誰かに見られたら、間違いなく俺は変質者と思われるだろう。 「クレイジージャパニーズヒップマン」と呼ばれ、このロッジに居づらくなってしまう。
「いやぁぁぁぁああッ!!変態ィィィィィィッ!!」 と大声で叫ばれ、女性の悲鳴をを聞いて駆けつけた人達に取り押さえられ 「この日本人、私を強姦しようとしたんです!だってズボン下ろしてたもの!!」 と女性に言われ、弁解の余地はないまま、犯罪者にされてしまう。
日本にいる家族には「大悟さんはネパールで強姦未遂の容疑で投獄されています」と伝えられるだろう。 絶対にそれだけは避けたい。
尻丸出しの状態を保ちつつ、足音を殺しながら、出来うる限り素早く自分の部屋を目指す。
凍てつく冷気が肛門に突き刺さるぜェ……。
なんとか誰にも見つからず無事部屋までたどり着いた。 尻丸出しのままバックパックをあさり、トイレットペーパーを手に取る。
お久しぶりです。神(紙)様…。
その純白のサラサラした神(紙)様で、肛門に付着している汚物を拭き取り、トイレのゴミ箱に捨てに行く。
やれやれだぜ。
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超インドア派。妄想族である。立ち相撲が結構強い。
好きなTV番組は「SASUKE」。