とある日の夕食後、創太さんとテツさんにアンダーグラウンドな世界に強制連行された。
渋々、創太さんとテツさんに同行し向かった先は、薄暗い古びた建物だった。
「中に入りたいのか?」 小屋番らしき男が尋ねてきた。
こちらが「そうだ」と伝えると、鍵が開けられ中に入ることができた。
建物内部は真っ暗だ。 階段を上った先には鉄格子があり、その向こう側から男が降りてきた。
「……何人だ?」
「3人」
鉄格子の鍵が開けられる。
「早く入れ」 男にそう言われ、自分たちが奥に進むと鉄格子が閉め直される。
なんじゃこの梅澤春人が描くようなアンダーグラウンドな世界はッ!
こんな怖い人がいたら俺小便漏らしそう……。
男についていき、建物の最上階近くまで上がっただろうか。 その部屋に入り、無造作に置かれていた椅子に腰掛ける。 1人は小太りで陽気な感じの女性。1人は切れ目で細身の色白の女性。1人は割と端正な顔立ちをしたおとなしい雰囲気の女性の3人だ。
小太りの娼婦は笑いながら、創太さんの頰をギューッと抓る。
「あだだだだだだっ!なんで抓るの!?」
続けて俺の頰も抓られる。
「痛だだだだだだっ!」
なんで初対面の人間にほっぺた抓られにゃならんのだッ! 男が言う。
「俺はここまでで。宿に戻ります」
「じゃあ俺も帰るわ」
「あ、俺も」
みんな帰るんかい。
結局、ただの見学に終わった。
「何よ、冷やかしなの」 色白切れ目の娼婦が、そのような感じの言葉を吐き捨てて、娼婦たちは奥の部屋に戻っていった。
その日以降、夜の社会見学はほぼ毎晩続いた。
「ジギりてー。ジギりてー。ジギりてーよー」
テツさんは、常々このようなことを呟いている。
自己発電では駄目なのかと尋ねたところ、 「自己発電じゃ駄目なんだー。ジギらないと駄目なんだー」 と悶々とした様子だ。
テツさんの盛り具合は、発情期のノラ猫並みである。
何故かその日は、夜のカトマンズの町がなにやら騒がしかった。
普段より人が多い気がするが……、気のせいかな。
そんなことを考えながら階段を上っていく。
「またここかー」
「どうせ同じ姉ちゃんしかいないんだろ」
そう言いながら、娼婦たちのいる部屋に向かった。
案の定、登場したのは前回と同じ3人の娼婦だ。
「また、あんた達!?冷やかしだったら帰って帰って!!」
色白切れ目の娼婦は自分たちを見た途端、声を荒げ、奥の部屋に戻っていった。
なんで無理やり連れられてきた俺も怒られにゃならんのだ……。
しょぼーんとしながら建物の外に出ると、付近には大勢の人が徘徊していた。
なんじゃこの大勢の人は?
こんな夜も更けた時間帯に、こんなに人が出歩いているのは珍しい。
やっぱり今日何かあるのかな? しかし、この雰囲気はめでたい祭りのような感じではない。 なにかピリピリしている重苦しい雰囲気だ。
そう思っていると、機動隊のような格好をした集団が近くにやってきた。
なんだなんだッ!?
そして、その機動隊集団が一斉に建物の中に突入する。
なんだなんだっ!
今まさに目の前で、テレビで見たことのあるような光景が繰り広げられている。 日本警察24時ならぬ、ネパール警察24時である。
危ねー。外に出るのがあと10分遅かったら俺たち捕まっていたかもしれん。
そんなことになれば「ネパールの売春宿で日本人3人を検挙」と日本で報道されるだろう。
「確かに売春宿にいたけど、俺は無関係です!この日本人2人組に脅されて無理矢理ここに連れられてきたんです!捕まえるのはこの2人だけにしてください!!」 と弁明しようとしても問答無用で投獄される。
日本にいる家族には「大悟さんはネパールの売春宿で検挙されました」と伝えられるはずである。 もしそうなったら、出所しても恥ずかしくて日本に帰るに帰れない。
結局、夜の社会見学は最終的にただのキャバクラ通いになった。
しかしネパールのキャバクラは相変わらず、以前に大輔さんと行った時と同じく、女性陣は ずっと「…………………………」状態である。
全然楽しくない。
どっちにしても俺、こういうところ苦手だし。
しかも隣に座った女性が、日頃歯磨きを怠っているのかやたら口臭がキツい(号泣)
だが、自称「Mr.紳士な俺」は「君、口めっちゃ臭いね」なんて乙女心を傷つけるような失礼な言葉を口にすることなど出来ないので、とりあえず持ち込んだ食パン(明日の朝食用のパンを買った帰りに無理やりキャバクラに連れていかされた)を食べさせて、口にパンで蓋をしておいた。
多少は臭いも和らぐだろう。
つーか、客商売なんだから歯は大事にしなさいお嬢さん。
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超インドア派。妄想族である。立ち相撲が結構強い。
好きなTV番組は「SASUKE」。